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ストーリーというブランドで勝負している会社の採用力が高い。 ~スマイルズ野崎様&スマイルズ松島様 ×クリーク・アンド・リバー社渡辺 鼎談(後編)

初めに

前回に続き、株式会社スマイルズ(以下スマイルズ)で、日本におけるデザイン経営を先駆的に実践し、多くのクリエイティブ人材を育ててこられた野崎様、および同社人事部採用チームで長年採用活動に携わってこられた松島様と、クリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)で、クリエイティブ人材の採用において多くの企業を支援してきた執行役員 渡辺の鼎談をお届けします。
後編の今回は、クリエイティブ人材を採用するにあたり、採用チームとして注力すること、クリエイティブ人材の定着を図るための施策などを語り合っていただきました。

【前編の記事はこちら】

【プロフィール】

野崎 亙(写真右)
株式会社スマイルズ 取締役 チーフクリエイティブオフィサー
2011年株式会社スマイルズ入社。2015年から現職。各種新規事業開発のプロデュース、ブランディングなどを担当のほか、外部クライアントへのプロデュースやコンサルティングを牽引。

松島 さおり (写真中央)
株式会社スマイルズ 人事サポートグループ 採用チーム
2013年4月入社、同年11月人事部新卒採用担当に。経済産業省 クリエイティブ産業課への出向等を経て、現在は全事業部・職種の採用・育成等を担う。

渡辺 和宏(写真左)
株式会社クリーク・アンド・リバー社 執行役員 
クリエイター・エージェンシー・グループ マネージャー
2002年株式会社クリーク・アンド・リバー社入社。映像分野で活躍する派遣就業クリエイターを担当、また制作受託の営業に従事。その後2005年から人材紹介事業を担当。

野崎 亙株式会社スマイルズ 取締役 チーフクリエイティブオフィサー

自分たちが相手に変わってほしいと思ったら、自分たちも変わる心づもりがないとお互いに良い変化にはならない。

渡辺
クリエイターというと引く手あまたでけっこう転職も多いのですが、スマイルズさんは定着のために何か制度を整えるなどの工夫をされていますか?

野崎
当社の雇用契約形態は現在、業務委託かフルコミッション契約かの2種類あります。ただ、ちょっと変わっているのが、業務委託といっても、大前提が「パートナーとしてスマイルズと一緒にいいものをつくってください」なので、ある種何をやってもOKなんです。

渡辺 業務委託と聞くと、限定的な関わりというイメージもありますよね。

野崎
そうかもしれませんね。でも、契約書に逐一書いてくれないとやりません、なんていう方は一人もいないんです。こちらも業務委託だからと、アクセスできる情報や、機会提供を限定することは一切ありません。基本的に契約形態に関係なく、関わっていただく一人ひとりが伸びやかに働くというのが前提になっていますから。

松島
業務委託契約を選択する場合も、候補者とコミュニケーションを重ねる中で、ということが増えています。会社の中だけに自分のアイデンティティや居場所を置かない方が増えてきているので、そういった方に合っている選択肢なのでしょうね。

渡辺
そこをちゃんと説明できて、求職者、御社ともに納得されているのであれば、スマイルズ的業務委託契約はいいですね。
私の知る契約社員求人のほとんどは、会社側の都合よく雇用調整弁にできるようにしておきたい感がにじみ出ている。それでは求職者も納得してくれません。

松島
クリエイティブ人材の定着を意図してという意味では、これといった答えがなくて困ってしまうのですが、先ほどの「スマイルズにはこういう人は合わないかも」というのを公開していることと、基本的に価値観への共感が採用のベースになっていますから、多くのクリエイターにとって何らかの能力を発揮しやすい環境になっているのだと思います。

渡辺
スキルベースじゃないから、採用の入り口の段階ですでに非常に確度の高い採用ができているわけですね。新卒なら分かりやすいですが、中途でも同じですか?

野崎
中途の方は、別の会社の価値観の中で過ごしてきたわけですから、当社に来たときに、いかにそこをゼロベースで、また吸収してやろうという貪欲な姿勢を持っているかどうかですね。これはどこの会社にも言えることかもしれませんが、そうした意識を持っている方はどこの会社に行っても活躍できるし、どこにでも入れるでしょう。

松島
私は新卒だったので、スマイルズの企業理念である「生活価値の拡充」でも、行動指針とする「五感」でもわりとすんなり受け取れたのですが、中途の方の中には、これまでの経験では測れないのか、例えば「世の中の体温を上げる」とは何をするの?といった質問をしてくる人もいます。とくにこれが答えです、という言葉はなく、あなたが見つけていくものだと言ってもなかなか解ってもらえない人はちょっと難しいかなと思いますね。
社員の定着を目的にしたわけではないですが、スマイルズには交換留学ならぬ「交換留職」という人材交流制度があります。これは、外部の会社や組織で一定期間働いて、また戻ってくるという制度で、スマイルズに共感して入社後、外の会社で通用するかと気になったり、時には違う環境に身を置いてみたいと思う社員にとって魅力のある制度だと思います。会社にとっても、社員の成長や新たな人脈などのメリットがありますし。私自身も、この制度で経済産業省に2年程出向していました。
とはいえ年単位で社員を送り出すのは、相当社員を信頼しているということですし、スマイルズの懐が深いなと思います。社員を内側に閉じ込めようとしない柔軟性が、かえって社員の定着に一役買っているのかもしれません。

野崎
スマイルズは社内制度が極端に少なくて、それがまあひとつの弱点と言えないこともないけれど、とにかく、制度というか約束事、決め事をつくることはむしろリスクだと思っています。制度の前に前例を作る、と言ったりします。

松島
もちろん、私たちの今のやり方が本当にいいのかと、根本的なところでは常に考えていかなくてはと思っています。「合わない人10か条」と書いていますけれど、それが一方的であってはいけないと思っていて、自分たちに新しい考え方をもたらしてくれるのも、新しく入ってきてくれた人なんですね。自分たちが相手に変わってほしいと思ったら、自分たちも変わる心づもりがないとお互いに良い変化にはならないと思っています。

野崎
渡辺さんが担当された会社の、人材定着のための制度や取り組みで、今後の私たちに参考になりそうな例があれば教えていただけますか。

渡辺
定着に効果が出ている例といっても、それほど特殊なことではなく、ごく当たり前の取り組みですが、新卒でも中途でもオン・ボーディングに以前よりも注力していますね。以前だと入社後、短期間の新入社員研修を行って、その後は配属部署のOJTに任せっぱなしが主流でしたけれど、最近は少なくとも1年間は全社の取り組みにシフトし、定期的にモチベーションサーベイを行い、能力や本人の志向性を見ながら柔軟に配置転換するなど早期離職を回避するオン・ボーディング設計・取り組みが行われています。
とくにこの2年はコロナ禍の影響で新人といえどもリモートワークをせざるを得ない状況ですから、孤立感を生じさせないよう、しっかりグリップする施策がそれぞれの会社の状態に即して行われていますね。

松島 さおり 株式会社スマイルズ 人事サポートグループ 採用チーム

人材が組織や会社のケーパビリティを高めることのできる最大の要因。

渡辺
スマイルズはどんな仕事観、人材観をお持ちですか?

野崎
フリーランスの方の場合って、スキルそのものが売り物になりますね。私たちも発注という形態としてそのスキルを買うことになります。即ち、その方が”やったことがないこと”を頼むことは不確実性が高いためになかなか無いわけです。でも社員の場合は違います。例えば新卒のメンバーがやったことないことでも「これをやってみて」とやってもらうことがありますよね。
会社というのは基本的には社員に可能性を与えることが大切だと考えています。個々人の不確実性を許容し、生産性以上に可能性を志向すること。中途だろうが新卒だろうが、絶えずその人のなかに不確実性と可能性が同居していて、何かのきっかけでその人の可能性が花開いて、対外的にも認められるスキルになっていく。それがひいては、会社の可能性をも押し広げてくれると思っているんです。

渡辺
人材がいるから仕事が発生してくる。この能力を使えば、こんな仕事ができるのではないかと。まさに人材そのものが組織や会社のケーパビリティを高めることのできる最大の要因になるというお考えなのですね。

松島
プロジェクトマネージャーという役職の人が何人もいるんですけれど、それぞれハッシュタグのように独自の得意分野を持っているんですよ。この人はプロ並みの写真が撮れるとか、この人はイベントのことだったら詳しいとか、この人は器にめちゃくちゃ詳しいとか。そこからこういう案件を取ってこようだったり、この人にアサインしようだったり、人ベースで始まることが多いですね。
それは世の中のクリエイターの方たちもそうだと思います。例えば映像ができるからではなくて、なにかプラスアルファで、この人だったらこういうこともやってくれそうという期待感があって仕事の依頼がくると思うんです。それが会社のなかでも行われているような感じですね。

渡辺
それを楽しめる人を採用したいですよね。自分は写真できるけれども、「それはこの会社のなかでの僕の仕事じゃないので」という人は仕事も狭まってしまいそうです。

野崎
自分の仕事に自分で制限をかけるのはもったいないですね。ただ、私は本人の言う「やりたいこと」だけですべてを判断しないようにしているんです。やりたいは変わるし、できないかもしれない。でも、得意なことは変わらないんです。なぜかといえば、それがその人の存在意義でもあるから。だからこそ譲れないものになる。私はそれを信じていて、一人ひとりの得意を集めれば、すごく可能性を広げることができると思っているんです。
加えて、その人の自分のなかのクリエイティビティを発信することができる環境を我々が用意できているかが大切なところですね。

松島
入社したばかりの人は、この人はどういうことが得意なんだろう、自分はどの分野で頼りにされるんだろう、と互いにハッシュタグを探っている期間があるんですね。入社後早めに、僕はこれ、私はこれ、と得意が発揮できるような案件がアサインできれば、わりと波に乗っていい感じに定着していくイメージがあります。そこがポイントである気がしています。

渡辺
なるほど、そこを早く引き出すスキームというか仕組みがあれば、活躍できるスピードが上がるかもしれないですね。
プロジェクトチームへの配属はアサインですか?

野崎
基本アサインですが、本人が手を上げればOKだし、当然能力的な部分への配慮はあります。ただし、この人とあの人を組み合わせたら面白そうといった判断でアサインすることも多いように思います。毎度同じメンバーでのプロジェクトチームは、確かに慣れていて生産性は高まるけれど、ルーティン化によって予定調和な落としどころになってしまいがちです。自分の得意とか興味領域だけで仕事はできないけれど、いままでにない組み合わせでやると、仕事がルーティンにならないので、本人の別の側面が見えてきたりするわけです。そこからまた新しい能力の発見、開発につながったりするんですね。

渡辺
よくありがちなのは、阿吽の呼吸というか、この人はここが得意だから、そこに投げておけば仕事は回るというパターンですが、それだと固定化しやすいからそうはしないと。

野崎
もちろん、ルーティンが悪だと言っているのではありません。とにかく、いつも同じ場所で同じことをやっておけばいいという思考停止を回避したいんです。
採用でも「新卒採用よろしくね」って言ったら、「いつも通りやりました、及第点60点取りました」となるより、60点取れるのが分かっていたら、それは置いておいて、オルタナティブな別の方法で挑戦してみたほうが未来の可能性があるわけです。目の前の生産性より未来の可能性を取りに行くことを今は目指してほしいと思っています。

渡辺
クリエイターの評価制度はどうなっていますか?

野崎
人それぞれに個性があって特長があるため標準化した評価基準をつくるのが困難で、ある程度の仕組みはありつつ、かつては私とマンツーマンの評価でした。
事前に一人ずつ、あなたの一番強いところを伸ばしてくださいとオーダーを伝えて、実行してもらうというのが基本スタンスです。一人ひとり評価の軸が違うから大変なんですけどね。最近はスタッフ数が増えたのでもう少し仕組化しましたが。

渡辺
評価される側は、ちゃんと見てくれて評価してくれているのか、納得感があるかどうかが肝になると思いますね。クリエイティブ職においては、定量的、定性的両方のバランスを見ながらクリエイターならではの評価設計ができているところは納得感をもって仕事に取り組めていると感じます。

野崎
立派な評価制度があったとしても、評価者がしっかり見ているかどうかが重要なことは確かですね。
私は、手前みそになりますが、1人ずつの違う軸に対して見るようにしています。表面上ではなく、機微というか、本人がそうしたいと言っているかどうかは置いておいて、君がこうなると最高に素敵になるという視点で見ていますね。

渡辺 和宏 株式会社クリーク・アンド・リバー社 執行役員 クリエイター・エージェンシー・グループ マネージャー

ストーリーというブランドで勝負している会社の採用力が高い。

松島
スマイルズみたいな企業ばかりではないと思うのですが、渡辺さんは価値観が ハッキリしない企業の採用をどのようにサポートされているのですか?

渡辺
お客さまの会社を知っていないと求職者へ上手く伝えることができないと思っています。今日伺ったお話のような、自社サイトには記載が難しい、これまでのカルチャーやこれからの方向性、何を大切にしているのか、なぜそれを大切にするに至ったのかの背景はもちろん、あえて課題も具体的に把握するようにヒアリングしていますね。
良い情報ばかりを提供したところで、求職者側にも採用する側にもどちらも未来が創れません。どちらの悪いところも良いところもさらけ出せるように情報を収集して、整理してお伝えしています。
求職者が本当にマッチする企業で活躍できるように、また採用した企業様にも、適した人材をありがとう、と言っていただけるようなサポートを心がけています。 スマイルズさんはクリエイティブ人材を採用するに際して、どんな点に留意していますか?

松島
逆説的ですが、他社と比べないことだと思います。他社がこうしているから当社も同じようにしていては、結局どこにでもある会社になってしまうでしょう。
自分たちの会社が本当にやろうとしている大事なことは何なのかを見つめ直して、発信していくことが大切だと思いますね。

野崎
どんな人を採りたいかと考える前に、その人たちにとって自分たちが適っているのかを見直すことが大前提だと思います。社員には「自由に働いて、自分の価値観を現実化してほしい。」と言いながら、実は「社内制度はガチガチです。」だと本末転倒ですよね。だから会社自身の体裁や中身が求職者にとって価値を見出せる状況を醸成することが必要だと思います。ニワトリが先か卵が先か、みたいな問答になってしまいますけどね。

渡辺
スマイルズさんはすごく上手だと思いますよ。昔は条件とかマッチング的な要素で勝負できていたのですが、いまはストーリーというブランドで勝負している会社の採用力が高い。その点スマイルズさんは確固たるブランディングで勝負できているから強いですよ。

終わりに

日本における「デザイン経営」の先駆者といえるスマイルズ社との鼎談を通して、クリエイティブ人材の採用に人事部門、および会社としてどう取り組んでいったらよいのか、また、人材の定着のために何に注力したらよいのかなどを紹介してきました。
独特の人材観やユニークな施策で採用および人材定着に成功しているスマイルズ社の取り組みがすべての会社に当てはまるとは言えませんが、普遍的な部分では、現在のクリエイティブ人材採用において大切なことは、

1.自社オリジナルの揺るぎない価値観、確固たるビジョンをもち採用ブランディングを確立する 
2.その採用ブランドを地道に広く発信し続ける 
3.応募者には自社の魅力だけを伝えるのではなく、負の部分も隠さず伝える 
4.採用はスキルだけにフォーカスせず、価値観の共感・共有を重視する(それが定着にもつながる)。

と読み取れます。 この鼎談を参考に、厳しいクリエイティブ人材の争奪戦を勝ち抜いていただければ幸いです。



【前編はこちら:価値観、志を共にする仲間たちと一緒にコトをつくっていきたい。 ~スマイルズ野崎様&スマイルズ松島様 ×クリーク・アンド・リバー社渡辺 鼎談(前編)~】

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この記事を書いた人

HIGH-FIVE編集部

取材・文、撮影、編集:HIGH-FIVE[HR]編集部