公開日:2022/05/30
変更日:2024/08/29
近年、社会生活のいたるところで耳にする「SDGs」。2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに貧困や環境問題、人権問題などを解決し世界全体の平和を実現するための世界共通の目標を指します。行政機関や民間企業で盛んに取り組まれていますが、企業の人事・採用業務とも密接に結びつく取り組みであることは意外と認識されていません。
この記事では、優秀な人材の獲得にもつながるSDGsについて、企業の人事・採用担当者が理解し、実践するうえでのポイントなどを紹介・解説します。
目次
本章では、SDGsとは何かを簡単におさらいし、企業がなぜSDGsに注目するのか、またその取り組みのメリットを解説します。
SDGsとは、2030年までに持続可能で平和なより良い世界を目指す国際的な目標であり、2015年9月の国連サミットで採択されました。
貧困や資源・環境問題、人権問題、教育やジェンダー格差などのさまざまな社会問題に対し、17のゴール(目標)を細分化した169のターゲットで構成されています。
政府や行政だけでなく、民間企業の経営指針としても注目されています。
1.企業イメージ、信頼性の向上
社会・環境・人権など、世界共通の課題としっかり向き合い、積極的に取り組む企業であることをアピールでき、企業イメージの向上が期待できます。
2.企業の未来を担う人材を惹きつける採用ブランディングの醸成
SDGsの実現を目指す未来像を享受する当事者でもある学生は、SDGsへの関心が非常に高くなっています。企業のSDGsへの取り組みや採用担当者の取り組みに関するPR・採用ブランディングの醸成で学生の志望度向上が期待できます。
3.従業員の意識やモチベーションの向上
SDGsの従業員研修などを実施することで当事者意識を持たせ、社会貢献に対する意識づけを強化することができます。研修で身につけた知識を業務プロセスの見直しに活かすことで生産性も向上し、さらに働きがいやエンゲージメントの向上につながるといった相乗効果も見込めます。
本章では、SDGsの掲げる17の目標のうち、とくに人事・採用と関係性が深い4つの目標を紹介します。
企業はすべての従業員が心身の健康を保つために配慮を怠ってはなりません。労働環境の整備や従業員の健康を意識した健康経営、メンタルヘルスケアなどに取り組み、労働基準法を遵守した、健康増進のための福利厚生の充実を図ることが求められています。
世界の先進国に比べて日本は女性活躍推進や女性管理職比率などにおいて大きな後れをとっています。雇用機会や賃金、その他待遇において性別を理由にした格差をなくし、セクハラを是正するなどの取り組みが求められています。また、LGBTといった性的少数派の人が働きやすい職場環境の整備も重要です。
働きがいをもって自分らしく働ける環境と、企業の業績向上の両方を実現させることです。
人事部には従業員が働きがいを実感できるような職場環境・制度の充実を図ることが求められます。働きがいを実感できれば生産性も上がり、企業業績の向上、経済成長にもつながります。
あらゆる要素における、人・国の不平等是正をゴールとするものです。
企業においては、賃金や待遇など従業員間の不平等をなくす取り組みが求められます。具体的には、障がい者雇用、シニア活用、グローバル人材の雇用およびその雇用形態による待遇格差の是正が挙げられます。
本章では、SDGs実践のために人事・採用部門が関わる主な業務を4つ紹介します。
労働基準法や男女雇用機会均等法など、労働関連法とSDGsは密接につながっています。人事部は、制度の見直し、充実といった重要な役割を担っています。
具体的な取り組みでは、「健康経営への取り組み」「スポーツジム利用補助など従業員の健康増進制度の充実」「同一労働同一賃金など待遇改善」などが挙げられます。
幅広い人材を採用し活用することが求められます。
障がい者雇用促進法など採用に関する法律を守るだけではなく、ジェンダーやグローバルの観点を考慮しながら取り組むことが大切です。
雇用形態や性別の垣根を越えた、平等な教育機会を提供することが求められます。
全従業員にリスキルの機会を提供するなど、「目標4:質の高い教育をみんなに-働く技能を備えた若者と成人の割合を増やす」の目標にもつながります。
ジェンダー格差の解消や働きがいの向上を目指した施策が求められます。
ジェンダーにとどまらず、LGBTなど多様な人材の差別をなくす人事戦略が必要となっています。また、人材のスキルや資質を可視化し、適材適所の配置や育成をすることで成果を最大化する戦略人事「タレントマネジメント」も注目されています。
本章では、SDGsに取り組むうえでの課題となる項目を紹介します。
従業員の業務にこれまでにない負担がかかってしまうことも考えられます。定期的なPDCAで本来の業務以外に時間を割かなくてはならず、長時間労働につながることは避けたいものです。
スポーツジムの費用補助や設備の拡充などで、コストが増大し経営を圧迫するのでは本末転倒です。どこまでコストを許容できるか、しっかり見定めておく必要があります。
経営陣が一方的に決定し、トップダウンのSDGs施行で従業員に負担をかけているケースもあります。研修などでSDGsに取り組む意義を理解させることで当事者意識を植え付けることが必要です。
本章では、SDGsに取り組む際の留意点・ポイントを紹介します。
人事の取り組みが経営理念に沿っていて、会社全体のSDGs施策と方向性が合っているかどうかを確認し、人事・採用戦略のPDCAを進めましょう。
SDGsは2030年に向けた取り組みです。短期的な施策で終わることのないように属人化を避け、長期的な運用を前提とした体制構築が重要です。
SDGsウォッシュとは、SDGsに取り組んでいるように見せかけて実態が伴っていない状態のことです。それを避けるために、「根拠や情報源が不明な表現を避ける」「事実より誇張した表現を避ける」「言葉の意味が明確でない、あいまいな表現を避ける」といった点に注意することが大切です。
この記事では、SDGsと人事・採用部門の関わりを、企業がSDGsに取り組むメリット、人事部門と関係が深いSDGsの目標、人事部門が実践できること、その実践における課題、ポイントを解説・紹介してきました。
SDGsは、企業イメージや採用ブランディングの向上、優秀な人材の確保、従業員のエンゲージメント向上などに重要な役割を果たします。 人事・採用部門でSDGsに取り組む際の参考になれば幸いです。
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