公開日:2023/02/13
変更日:2024/08/29
少子高齢化によって労働人口が減少する一方、企業内では仕事の高度化が進み、優秀な人材の獲得競争が激化しています。この競争に打ち勝つために、自社の“魅力”や“価値”など一貫したメッセージを発信し、自社の求める人材(ターゲット)が、「この会社で働いてみたい」と思ってもらえるようにすることを『エンプロイヤーブランディング』と呼び、いま注目度が高まっています。
この記事では、エンプロイヤーブランディングを導入したいが、「ノウハウがない」「何から始めればいいかわからない」といった理由で取り組みに躊躇する企業・人事担当者のために、戦略の在り方や手法、情報発信のポイントなどを紹介します。
目次
エンプロイヤーブランディングとは、働く場としての魅力を戦略的に構築・発信し、企業イメージ(エンプロイヤーブランド)を高める取り組みを指します。
最近の採用市場では、求職者が企業を選ぶ時代になりつつあります。また、SNSや転職口コミサイトなどの普及で、ネットには企業の内情のリアルな情報があふれており、求職者はそれらを参考にしています。応募者を増やすためには、魅力的な企業であることを求職者に伝えなくてはなりませんが、小手先で取り繕った情報はすぐに見抜かれてしまいます。
働く場としての魅力を実際に高め、リアルな情報発信をするエンプロイヤーブランディングが人材獲得のカギを握っているといえます。
本章ではエンプロイヤーブランディングに取り組むことで得られるメリットを紹介します。
企業の採用力が高まり、質の高い応募者を多く集められるようになります。求める人物像に沿って自社のエンプロイヤーブランドをデザインすることで、それにマッチした人材が集まりやすくなる効果もあります。
エンプロイヤーブランドの構築・発信によって社会からの評価が高まれば、働く社員も自社への誇りを持ち、帰属意識が高まります。実際に働く場としての魅力が向上すれば、人材の定着につながり、離職率の低下が期待できます。
質の高い応募者が集まれば、選考プロセスはより効率的になります。また、応募者の辞退率が下がれば、入社交渉や辞退者の穴を埋めるための追加採用活動にかける時間・労力が低減できます。
本章ではエンプロイヤーブランディング導入のために必要な手順を解説します。
まずは自社が求める人材を明確にしたうえで、彼らがどのような職場に魅力を感じるのかを明確にする必要があります。また、実際に入社後に活躍している社員にインタビューするのも有効です。
一方、選考や内定を辞退した求職者に理由を聞くのも新たな視点が得られる可能性があります。この取り組みによって後の工程の精度が変わってくるため、丁寧に行う必要があります。
アプローチしたい人材の求めるニーズが把握できたら、それに適合したエンプロイヤーブランドを設定します。ここでは自社のコーポレートブランディングや商品イメージとの整合性に注意する必要もあります。
客観的な自社イメージを把握し、的確な戦略の策定・実行につなげることが大切です。応募者に広くアンケートを取るなど、客観的かつ具体的な意見を多く集める工夫が重要です。社員がもっている自社のイメージと外部からの印象とではズレが生じることもあります。そのズレを検証し、思わぬ強みが見つかったり、強みが訴求できていないことへの気づきが生まれます。
企業が社員に対して提供できる価値提案を意味するEVP。具体例としては、給与や福利厚生などの待遇、仕事で得られるスキルややりがいなどがあります。自社が社員に対してどのような価値を提供できるかを洗い出し、その価値が市場においてどの程度の競争力を持つかを分析します。
上記ステップ1から4の結果を踏まえたうえで、エンプロイヤーブランディング戦略を策定します。戦略は企業が置かれている状況によりそれぞれ異なります。社員への価値提供は十分だが、自社イメージが内部と市場で乖離している場合は、情報発信・広報活動の強化に軸足を置く戦略が必要でしょう。自社が現在提供できている価値の方向性が構築したいブランドと異なっている、または不足している場合は、働く環境そのものを変化させる対策が必要です。
本章では、エンプロイヤーブランディングを成功に導くために留意する点を紹介します。
エンプロイヤーブランディングは短いスパンで効果が期待できるものではありません。短期的な取り組みで結果が出ないからといって、一度設定したブランドの方向性を変えてもまた同じ結果に陥る可能性が高いでしょう。中長期的に捉え、一貫性のある企業イメージを発信し続けることが重要です。
エンプロイヤーブランディングは、発信する企業イメージと実態が合致していることが重要です。求職者は、転職系口コミサイトやOB訪問などで実際に働く人の声を聞く機会があり、その実態が発信している情報と異なっていると効果は激減します。仮に発信する情報を信じて入社しても、職場環境や待遇などがまったく違うものならば、早期離職のリスクが高まります。
採用した人材が社内環境に早く適応できるよう、研修や定期面接、メンターによるサポートなどオンボーディング体制を整えることが必要です。スムーズな受け入れ体制があれば、新入社員はさらに良いイメージをもち、定着率を高めるだけでなく、情報発信者となりエンプロイヤーブランディングのさらなる浸透効果も期待できます。
外部への発信だけでなく、内部への働きかけも重要です。企業が働きやすい環境や公平性のある人事制度、やりがいのある仕事など高い価値を提供できれば、自身の能力を存分に発揮し、モチベーション高く働く社員が自然と増えます。魅力的な同僚がいることはエンプロイヤーブランディングにおける強力な武器になります。職場に満足している社員がそのことを周りに伝えることで最も効果的なエンプロイヤーブランディングとなります。
求職者の共感を得られるコンテンツ作成と発信が重要です。それにはシェアードバリューコンテンツの作成が求められます。シェアードバリューコンテンツは、会社が何のために活動し、何を目指し、何を目標としているか、そしてこの会社で働くことにより、求職者がどのように社会に貢献できるかを盛り込んだコンテンツです。価値観や社会貢献性に訴え、共感を醸成する効果があります。
人事要件やポジションの魅力は、やはり現場の社員が一番理解しているのではないでしょうか。そうした観点で考えれば、これからの時代は社員全員が採用担当者として採用に関わることが理想であると考えられます。社員一人ひとりが会社の魅力を発信し、かつ採用担当となることで、リファラル採用の成功へとつながります。
この記事では、エンプロイヤーブランディング導入におけるメリット、実施にいたる手順、留意するポイントなどを紹介しました。求職者に選ばれる魅力ある企業になるために、エンプロイヤーブランドを高めることが重要なことがお分かりいただけたと思います。
この記事を参考にエンプロイヤーブランディングに取り組み、採用力強化、さらに社員エンゲージメント向上が実現されることを願っています。