公開日:2021/09/12
変更日:2024/08/29
大企業や成長企業であっても、優秀人材を採用するために超えなくてはならない壁が必ず存在します。そこで今回は、その壁となる原因を分析し、打開策を解説します。
また、優秀な人材を採用するために、とくにIT系・クリエイティブ系企業で取り入れている、「デザイン思考」について紹介します。
本章では、優秀な人材を採用するうえで、企業がぶつかる壁とそれを打開する改善策を、大企業と成長企業に分けて解説します。
①自社の求める人物の応募が少ない
採用サイト、オウンドメディアなどへの流入、応募は一定数あるものの、自社の求めている人材(有効応募数)が少ないケースです。
②面接に工数・時間がかかり過ぎている
多人数採用のため、面接フローも面接担当者→人事部長→役員→社長など段階が多いといった理由から必要以上の工数・時間がかかり、採用担当者だけでなく候補者にも負担がかかっています。
③採用担当者が多いため面接スキルのバラツキがある
採用担当者の面接スキルや採用基準が均一でないため、必要な候補者を選考過程で落としてしまう可能性があります。
④採用計画の人数だけを追い求めている
採用計画達成のために数字(人数)だけを追いかけてしまう現象です。目先の頭数だけは確保できても、将来的に活躍する人材が採用できているとは限りません。
⑤選考中の離脱や内定辞退が多い
選考結果の通知・連絡が遅いなど的確でタイムリーな応募者フォローができていない場合に起こりがちです。また、採用担当者の対応が不誠実(不快)だったということも原因となる場合もあります。
①採用計画を見直し、再構築する
「将来的に事業を成長させるために必要な人材を採用する」という原点に立ち返り、どの部署にどのような人材が必要かを明確にします。現実的なペルソナ設計を行い、そのターゲットに伝えるための採用計画・戦略を再構築しましょう。
優秀な人材を採用するためには、これまで定めた基準・ルールだけを適用するのではなく、ある程度許容範囲を広げた基準を設けることが大切です。
②採用オペレーションを見直し、最適化する
人事部だけでなく、経営層や配属先の部署など社内を巻き込み、採用を全社のミッションとすることがポイントです。
スキルチェックが難しい職種(IT系、クリエイティブ系など)の場合、現場社員にも選考に携わってもらえば、スキルチェックの正確性も高まります。候補者も入社後に一緒に働く社員と接することで、入社後の姿をイメージしやすくなります。
③採用CX(キャンディデート・エクスペリエンス)とキャンディデートジャーニーの設計 選考中の離脱や内定辞退を避けるために、候補者フォローや惹きつけを見直す必要があります。候補者の企業認知・応募・選考・内定/入社に至るまでのCX(キャンディデート エクスペリエンス)を設計することで、採用につながる個々の戦略が立てやすくなります。
①知名度の低さによる訴求力不足
大企業に比べ、知名度や資金力で劣るベンチャー・成長企業は、認知度やブランド力の低さから、求人広告を掲出しても求職者にスルーされることが多いのが現状です。
②採用活動にかける人手、時間が足りない
ベンチャー・成長企業では、専任の採用担当を置けるケースは多くありません。採用活動にかける人手も時間も足りないため、工数・手間のかかる施策を積極的に活用することが難しくなっています。
③採用計画の不備
設立当初からの経営陣の人脈によるリファラル採用に頼ることが多く、そもそもの戦略的な採用計画を策定していない企業も多く見られます。
①採用計画の策定または見直し
どの部署にどのような人材が必要か、現実的なペルソナ設計を行い、そのターゲットに伝えるための採用計画・戦略を策定しましょう。
②採用手法・求人広告の見直し
まずは求める人物像(ペルソナ)を明確にし、そのペルソナとなる層に一番注目されている採用媒体に絞って自社の強み・魅力を前面に出した求人広告を打つことが大切です。
広く浅く打ち出した求人広告で応募数を増やせたとしても、その中に欲しい人材がいないようでは意味がありません。スキルの高い候補者を獲得することに重点をおきましょう。
③人的リソースを割き、担当者がコア業務に集中できる環境をつくる
採用を全社的なミッションと位置づけ、経営層や配属部署にも協力を仰ぎ、採用体制を確立しましょう。マンパワー不足が解消できれば有効な施策も利用可能となります。また、人事担当者がよりコアな採用業務に集中できるように採用代行などのアウトソーシングも検討するとよいでしょう。
とくに大企業の採用活動にありがちな、「前例主義、ルール主義、平等・フェア・全体の最適」が採用の障壁になっているケースがあるようです。 そこで本章では、人間の感情に着目し、想像力を働かせて問題を解決する技法「デザイン思考」に着目し、応募者・社員一人ひとりを見る「デザイン思考」で優秀な人材を採用するポイントを紹介します。
現在は、優秀な人材ほど採用媒体を使わずに転職が可能な状態が生まれています。企業側もダイレクトリクルーティングなどを駆使して、「マス」から「個」、「受動」から「能動」へと採用手法を転換する傾向が見られます。1000人集めて10人採用するパターンではなく、優秀な人材を10人集めて10人採用する確実性と効率性を両立させた採用です。 そこで有効となるのが「デザイン思考」です。 デザイン思考の採用でポイントとなるのは、応募者をしっかり観察し、応募者の思考・心理状態に沿って考え、「認知・興味」「応募」「選考」の各フェーズで、いかに次のステップに進みやすくするかです。
①認知・興味
採用したいペルソナ(求める人物像)を明確にして、そこに響く自社の魅力・強みをアピールするだけでなく、応募者にとって自社に入るメリットを伝え、共感を得ることが大切です。
②応募
求人チャネルはターゲットに応じて「ペイドメディア」「オウンドメディア」「アーンドメディア」を使い分けること、採用ターゲットの状況・属性を考慮して応募・接触フローを設計すること、応募までの導線を分かりやすくすることが大切です。
③選考
面接では一定の情報をあらかじめ応募者に提示しておけば、限られた時間を有効に使えます。面接を現場(実際の配属予定部署)社員に任せ、役員は承認だけをする方法も有効です。「採用した人が責任をもって育てる」という考え方であり、応募者も面接の場ながら、こういう人たちと仕事をするのかという共感を醸成しやすくなります。
本稿では、大企業や成長企業の採用活動における障壁とその打開策を解説してきました(§1)。そこで共通して言えるのは、自社が求める人物像(ペルソナ)が明確化されていないため、採用計画、手法などにボタンの掛け違いが生じ、結果的に満足のゆく採用ができていない。企業規模に関わらず、採用担当者のリソース、その質・姿勢の改善が求められることなどが浮き彫りになってきました。
§2では、感度の高い、優秀な人材を採用するためのひとつの考え方・手法として「デザイン思考」を紹介しました。応募者の思考や立場に沿って考え、採用手法や選考を従来(既存)のルールなどに縛られずに設計するこの思考は、企業規模や業種に関わらずIT系・クリエイティブ系人材の採用を考える企業には、とくに当てはまるのではないでしょうか。
この記事を書いた人
大学を卒業後、関西の広告代理店へ入社し、営業として求人媒体の広告販売や雑誌メディアの広告販売、SPツールの企画、提案、制作進行管理を4年ほど経験。クライアントは地元関西の企業や飲食店、美容室などがメインでほぼ新規での営業を経験。その後、クリーク・アンド・リバー社へ転職し、13年...