公開日:2022/11/21
変更日:2024/08/29
働き方改革の推進や少子高齢化、グローバル化などにより人々の働き方や価値観も多様化し、臨機応変な課題解決や対応ができる自律型人材、自律型組織が求められています。その自律した人材・組織を形成する重要な要素として「レジリエンス」が注目されています。
レジリエンスは変化への適応力となるほか、生産性やチャレンジ精神にもつながるため、これからの時代に不可欠な能力といわれています。
この記事では、レジリエンスの概念、重要性をはじめ、採用時に応募者のレジリエンスをチェックするポイントなどを解説・紹介します。
本章では、レジリエンスの概念、レジリエンスが重要視されるに至った背景を解説します。
レジリエンス(resilience)とは、直訳すれば「反発力」「回復力」の意味で、もともとは物理学で使われている言葉です。近年は組織論、経営学、社会システム論など幅広い分野で用いられており、ビジネス分野では責任や失敗などのストレス、環境の変化を「精神的な回復力」で乗り越えることを指す用語として注目されています。
レジリエンスを身につければ、ストレスがかかっても心や体の健康を保ちながら、個人や企業の成長、強固な組織づくりを実現することが可能とされています。
SDGsやダイバーシティ、DX推進などの取り組みが世界的に進行していることで、これまでの風土や価値観から脱却しようとする組織が増加しています。
企業や組織の価値観が変わるにつれ社員の価値観の変化も必要であり、それに伴うストレスも生じやすくなっています。ストレスを完全に防ぐことや回復させることは難しいため、それらの経験を糧に成長するレジリエンスを身につけることが重要だとされています。
本章では、レジリエンスがどのような要素を含んでいるのかを解説します。
①信頼関係の構築
困難や脅威など逆境が訪れたときには、支えてくれる存在がいると安心感を生みます。家族・友人・同僚など他者とのつながりや信頼関係に基づく安心感は「やればできる、乗り越えられる」といったポジティブな思考に結びつきます。企業活動においては、他者との業務的な協力や精神的な支えあい・気遣いが必要不可欠です。仲間や同僚との協力関係の構築がビジネスを成功に導きます。
②柔軟性のある思考
自身の感情に支配されず、問題に対して適切に立ち向かうために重要な能力です。物事を多方面からとらえ、大局的観点で対処すること、臨機応変な対応、冷静な判断、不必要なこだわりを持たないようにすることが大切です。
③楽観的な思考
楽観性とは「未来を良くする力が自分にはある」と思うことで、前向きな自信を表すものです。楽観的な思考があれば、ストレスや困難を脅威ではなく成長につながるものとして考えることが可能です。
④感情の制御
感情任せではなく、その時々で良い方向に行くように適した行動をとることができます。自らを律するセルフコントロール力をもち、できごとなどの対象に対する自身の感情・思考・行動を把握して適切に対処するものです。
⑤自己認識
自分の思考スタイル・感情表現の仕方・行動パターン・強み弱みなど、自己について認識することです。正しい自己認識能力は、事態の把握や自分が何に対してどう感じているのかを正確に認識することができ、逆境時の適切な行動につながります。
⑥キャラクター・ストレングス(Character Strength)
知恵・勇気・人間性・正義・節制・超越性に関する「24の強み」を表す言葉で、性格の強み、または強みとしての特性を指します。
※24の強み=創造性・好奇心・向学心・大局観・勇敢さ・忍耐力・誠実さ・熱意・親切心・愛情・社会的知能・公平さ・リーダーシップ・チームワーク・寛容さ・謙虚さ・思慮深さ・自制心・審美眼・感謝・ユーモア・希望・スピリチュアル
どんな場所、分野、文化のなかでも、言語が通じない同士のなかでも、人間の本質的良さとして価値を評価されるものを表しています。
本章では、レジリエンスを高めることで得られる効果を、個人(人材)と企業に分けて紹介します。
①集中力・パフォーマンスの向上
感情を自分でコントロールでき、どんなことに対しても高いモチベーションを保ちながら取り組むことが可能となります。また、最大限の能力発揮につながります。
②ネガティブなできごとにうまく対応できる柔軟性が高まる
どのようなできごとが起きても臨機応変な対応ができ、不安やストレスで落ち込むということが少なくなります。
③ストレスを受けても効果的な対処ができる
予測のつかないストレスをバネに、前向きに対処することができます。また、ストレスが逆に成長材料になります。
①生産性が向上
ストレスに潰される社員が減れば、社員一人ひとりが自分の仕事に専念しやすくなり、生産性アップにつながります。また、ミスや失敗に対して過度な恐れがなく、トラブルや課題に対して現実的な対処・行動がとれるため、質の高い仕事ができるようになります。
②失敗を恐れずチャレンジできるようになる
課題解決や難しいプロジェクトへの挑戦などを成長機会として捉えるため、新しいことにチャレンジする土壌がつくられます。
③組織バランスを整えやすくなる
レジリエンスが高い組織は変化を前向きに捉えるため、社員教育を始め、スキルアップや次世代リーダーの育成なども進めやすくなります。また、変化に追従でき、組織バランスを整えやすくなります。
本章では、採用時にレジリエンスをチェックするポイントと、見極めるために効果的な質問を紹介します。
レジリエンスの向上は、個人にも、企業・組織にもメリットがあります。下記はレジリエンスの高さをチェックする6つのポイントになります。
1.ストレス感知能力:ストレスの原因がある場合にストレスを感じることができる能力
2.ストレス回避能力:ストレスを感じやすい性格が関係し、感じる前に割り切る能力
3.ストレス処理能力:ストレスの原因そのものをなくしたり弱めたりできる能力
4.ストレス転換能力:ストレスの原因を理解し、良い方向に考えられる能力
5.ストレス経験値:これまで受けたストレスに対して、どのように対応したのか経験値を量ること
6.ストレス容量:ストレスをその程度抱えられるか、容量の大きさを量ること
「なぜ?」ではなく、「例えば?」と質問を投げかけると効果的です。
下記は質問例になりますので、参考にしてみてください。
①内面的な特性を見極める質問:「持ち味・欠点・課題」など
例)これまでの人生人材の転換期 について教えてください。
→そのときどのような対処をしましたか?
→転換期を経験して得たこと、失ったことはありますか? など
②しなやかな思考を聞く
例)自分と他者の意見がぶつかったときは、どのように対応しますか?
これまでの人生で最も失敗だと感じていることは何ですか?
→そこからどのような学びを得ましたか?
この記事では、レジリエンスの概念から必要とされる背景、レジリエンスを高めることで得られる効果、採用時にレジリエンスをチャックするポイントなどを紹介してきました。
レジリエンスは、目まぐるしく変化する現代社会において求められる能力のひとつです。社員のレジリエンスを高めることで、結果的に組織のレジリエンスも高まります。
レジリエンスは、社員が本来持っている性格によるところも大きいものです。後天的に鍛えることも可能ですが、まずはストレスの少ない、働きやすい職場環境づくりから始めてみてはいかがでしょうか。