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公開日:2023/02/24

変更日:2023/11/24

NTTドコモグループに学ぶ、企業の未来を変えるDX人材戦略~組織文化の変革および定着への取り組み

初めに

デジタル時代において、データ活用はあらゆるビジネスや生活の根幹となります。携帯電話・モバイル通信で日本最大規模の顧客基盤をもつ株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)では、データの力で事業価値や顧客価値の成長を加速させるため、2025年までにグループ全体でデータ活用人材5000人という目標を掲げました。

一方で、働き方としてリモートワークが主軸となる「リモートスタンダード制度」や、人事制度の変革も進行中。2023年4月からは、年功制から脱却して、専門性を高め自律的キャリアの構築を推進する仕組みに変わります。

壮大な人事変革を行いながら同時にデータ活用人材を増強させていくという課題に取り組むNTTドコモ 総務人事部の田中様、スマートライフカンパニー データプラットフォーム部の古川様と、デジタル人材の採用において多くの企業を支援してきたクリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)執行役員 渡辺が対談。取り組みの背景と実際について伺いました。(以下:敬称略)

プロフィール

田中 威津馬 氏
株式会社NTTドコモ
総務人事部 採用育成 育成担当課長
英インペリアルカレッジロンドン・情報システム工学科卒。バルセロナESADE MBA Co2017。入社以来、モバイルネットワークのエンジニアとして日本と世界を繋ぐ国際通信の仕事に従事。通信の国際規格を決める国際会議の議長など歴任。2021年夏から現職。

古川 大祐 氏
株式会社NTTドコモ
スマートライフカンパニー データプラットフォーム部 人材育成 担当課長
2006年東北大学農学部卒、同年NTTドコモ入社。代理店営業や代理店向け企画業務に長年従事。東北支社経営企画を経て、ドコモのデータ活用のための基盤構築・活用人材の育成・事業コンサルティングなどを担うデータプラットフォーム部に2022年夏から現職。

渡辺 和宏
株式会社クリーク・アンド・リバー社 執行役員
プロフェッショナル・プロデュース・グループ
2002年株式会社クリーク・アンド・リバー社入社。映像分野で活躍するクリエイター派遣および制作業務受託の営業に従事。その後2005年から人材紹介事業を担当。

ドコモグループ全体でデータ活用人材5000人を目指す

渡辺
まず最初に、弊社C&R社の紹介と、簡単な自己紹介をさせてください。C&R社は1990年に、当時テレビ局の番組ディレクターをしていた弊社創業者の井川が映像クリエイターの労働環境を改善しようと派遣業務を立ち上げたのが始まりです。その後、Web、広告、映像、ゲームなど様々な領域に広げ、人材紹介や派遣に加えて、事業企画やコンテンツ制作を含むプロデュース事業、ライツマネジメント事業を行っています。

私は人材紹介の部門を担当しており、最近はクリエイティブ以外のプロフェッショナル、たとえばデジタル人材であるデータサイエンティストやデータエンジニアや経営幹部(CXO)シェフ(料理人)の転職支援・採用支援を行っております。グループ会社や他事業部では弁護士、会計士、税理士、建築士、医師といった専門職の方々の転職・採用支援も行っています。田中様のご経歴と総務人事部でのお仕事について教えていただけますでしょうか。

株式会社NTTドコモ 田中氏

田中
私は2004年にNTTドコモに入社し、モバイルネットワークのエンジニアとして、日本と世界をつなぐ通信インフラやルールを決める国際会議など国際通信の業務に携わってきました。社費留学を挟んで2021年6月から現職になり、人材育成とキャリア推進を担当しています。社員の専門性をいかに高めるか、グローバル人材をどう育成するかの大きく2点をテーマに、人事として取り組んでいます。

渡辺
エンジニアから人事への異動なんですね。意外に感じますが、どういう経緯から異動になったのですか?

田中
人事のなかで労務や福利厚生に関しては社労士資格者などその道のプロが担当するのですが、ドコモのポリシーとして、育成や人の配置、処遇については現場の事業を知っている人が担っています。

渡辺
ジョブローテーションとして、現場経験者が人事に配属されるのですか?

田中
そうです。企業規模が大きく業態も様々なので、現場を知らないとどういう育成をしたら良いのか、どのような人が求められるのかがわからないので、このような仕組みになっています。

渡辺
続いて、古川様のご経歴とお仕事について教えていただけますでしょうか。

古川
私は2006年入社で東北支社に配属になり、ドコモショップ等を運営されている会社様を担当する代理店ルート営業に長く携わってきました。2022年6月から現職になり、データプラットフォーム部という部署に所属して、データ活用人材の育成を行っています。東京の本社所属ですが、自宅のある仙台に住んでおり、ほとんどの仕事をリモートで行っています。2025年までにドコモグループ全体でデータ活用人材を5000人にするという高い目標の実現に向けて邁進しています。

リモート研修「データクロスキャンプ」で多様な職種のデータ活用人材を内製

渡辺
5000人とはすごいですね。データ活用人材は、ドコモ社内で育成する内製と、外部からの中途採用があると思いますが、どのような方針なのでしょうか。

田中
基本的には内製が中心です。お客様のDXを推進するためには、まず自社のサービスや体制といったアセット(資産)を知らなければならないので、基礎的なナレッジがある社員を育成することにメリットがあるからです。

中期計画では「ドコモの挑戦」として、デジタルマーケティングの高度化やデータを活用したサービスの創出を戦略としています。それを実現するデータ活用人材を5000人にするために、「ドコモ データクロスキャンプ」(以下、クロスキャンプ)という研修を2021年から開始しました。

古川
クロスキャンプの企画・運営は、私の部署で担当しています。期間は6か月間、通常業務のうちの20~30%をこの研修に充てます。内容は、データ活用における課題抽出から仮説検証を行い、気づきを得て施策にするという一連の流れを、実際ドコモに存在した課題を取り上げて行うものです。

株式会社NTTドコモ 古川氏

対象者はドコモグループの全社員で、全国から挙手制で受講していただくリモート研修となっています。クロスキャンプの「クロス」はかけ合わせのイメージからきていて、拠点、職種、年齢も様々な方が一緒にチームをつくります。

渡辺
営業の人もいれば、技術職の人もいるということですか?

古川
そうです。コーポレート系の人もいますし、特に職種を絞ってはいません。マーケティングなどの座学を2か月弱した後にプロジェクトチームを作って、ドコモの業務におけるデータ活用の課題に取り組んで、最後に成果を発表します。

渡辺
業務時間内で、20~30%を充てるのは結構大変ではないですか?

古川
はい。部下に受講させる課長も大変なのですが、受講後の活躍の期待もあります。全社として力を入れているという「オフィシャル化」が大事だと思っています。

渡辺
オフィシャルだと手も挙げやすいですよね。今まで何人ぐらい受講されたのですか?

古川
2021年から開始して、卒業生が500人を超えたところです。現在の研修内容だと受講者の職種によってはオーバースペックなところもあるので、「クロスキャンプ・セレクト」という、学習領域を絞る代わりに短期間ですぐに実務で使えるプログラムを今年度から開始しました。こちらが約600人の卒業生となっていて、両方合わせて約1100名です。

渡辺
卒業生からの評判はいかがですか。

古川
上々です。たとえば、卒業をきっかけに自分の業務上のデータを整備して、クロスキャンプの新しい講座を作った人もいます。その講座に親和性の高い職種の受講生が参加すると、身に着けたスキルをすぐに業務に使える。そんな好循環が生まれてきました。クロスキャンプのチームにチューターをつけているのですが、卒業生が次の受講生チームのチューターとなって指導にあたってくれることもあります。また、卒業生が地域ごとに集まって、その地域の課題にデータを活用して取り組むことも始まっています。

株式会社クリーク・アンド・リバー社 渡辺

渡辺
早速、効果が出始めているんですね。他社ですと、データ活用の専門部署をつくってそこの人だけがデータ活用をする……たとえば営業部で課題があると、データ専門部署の方が社内コンサルのように支援することが多いようにお見受けします。そうすると営業部はお客さんのような感じになってしまい、各自がデータ活用をする文化になっていかないんです。ドコモさんのように、営業部や管理部などさまざまな方がプログラムに参加して、データ活用のスキルやナレッジを得て現場に戻り広めていく仕組みは、組織文化の変革に大変有効だと思います。

田中
通信・携帯電話や「スマートライフ」と呼ぶコンシューマー向けのサービス、法人向けのDXソリューションなど多方面でデータ活用が必要で、専門チームだけでは手が回らないのが実態です。また、各職場でデータ活用ができる人材が必要という事業戦略がトップから降りてきているという背景もあります。

古川
データドリブンな文化をつくるという変革には、コミュニティも大事だと思います。卒業生に活躍してもらうためには、一人にしないこと。何か悩みがあったときに、気軽に言えて、誰かが応えてくれる。仕事としてというより、仲間として応えてくれるコミュニティ・スペースが必要だと思い、それらの運営も行っています。

渡辺
それもデジタルで行うのですか。

古川
はい、Slackや社内チャットツールで運営しています。優良事例の水平展開などを目的としたWebミーティングも定期開催しています。タコつぼにならないよう共有をする文化が弊社には伝統的にあり、それをさらに広げていきたいと考えています。

強大な顧客基盤・営業網・技術力を武器に、新事業分野でキャリア採用を実施

渡辺
デジタル人材の内製化のお話を伺いましたけれど、外部からの採用もされているのですか。

田中
キャリア採用も活発です。さまざまな顧客にDXの提案をしていく際、その道に詳しい方が必要です。弊社に欠けている知識や人脈を取り入れるために、積極的にキャリア採用を進めています。

古川
ドコモ全体ではまだ中途入社者は少ないのですが、データプラットフォーム部ではその割合が多く、部署によっては半数ぐらいのところもあります。スマートライフカンパニーでは特にキャリア採用を強化しています。

渡辺
スマートライフカンパニーはどのような事業ドメインなのですか。

古川
簡単に言うと、携帯電話の通信“以外”の新しいビジネスです。動画コンテンツから電気インフラ、医療、農業など人々の生活に関わる領域にサービスを広げていこうとしています。ドコモをご利用の会員様は全国に8900万人いらっしゃるので、その方々にいかに新しい価値をご提供していくかに取り組んでいます。

渡辺
ドコモさんには強大な顧客基盤があり、さらに営業網も技術もある。潤沢なアセットを使って、非常に広い領域で新たな事業やサービスを立ち上げていこう、イノベーションを起こして育てていこうという組織なんですね。

転職支援をしている中で応募者と面談をしますと、ご自身が手掛けるサービスの反応をリアルに、しかも大規模に感じられるところに行きたいとおっしゃる方が多いです。たとえばWebメディアやアプリサービスの事業責任者の方にとって、対象が20万人のビジネスなのか、8900万人のビジネスなのかによってできることが大きく変わってくるので、世の中に大きくインパクトのあるビジネスをしたい方にとって、ドコモさんは魅力的なフィールドなんだろうと感じます。

田中
キャリア採用を促進するために、Webでインタビュー記事を数多く掲載しミートアップも実施しています。今回のような対談をさせていただくことも、情報発信として役立つと考えています。

データ活用の文化を浸透させる行動原則「かけ合わせよう。」

田中
中途入社者を受け入れる側として、会社全体が「データ活用をしよう」という文化になっていると入って来やすいと思うのですが、そのような文化が全く無いところだと難しいのではないですか?

渡辺
おっしゃる通りです。でもそういった企業からのニーズが大変多いです。データ活用において何をしたらいいかわからないからこそ、その事業を担ってくれる責任者を紹介してほしいというご要望をいただくのですが、大概失敗します。データ活用責任者がその企業に入っても、周りがデータ活用をしようと思っていないと提案をしても受け入れてもらえず、スピード感に欠ける。その結果、「自分のバリューを発揮できない」と退職されてしまうのです。

外部から人を採るにしても、内部のコンセンサスを作っておいてからでないと、執行役員クラスであっても動けません。ドコモさんのように、本社から全国営業所までデータ活用が共通の文化として浸透しているのは、中途入社者にはありがたい環境だと思います。

古川
データ活用は、意思決定プロセスの変革の面もあります。外部の方がいきなりそれをやるのは相当に困難です。意思決定には阿吽の呼吸や暗黙の了解もあるので、そこは内部の人間が問題意識をもって改革しないと変えられないですね。

田中
内部だけでも気づきがないので、外部からの人材をかけ合わせるプロセスが大事です。ドコモグループの新しい行動原則として、「問い続けよう。踏み出そう。かけ合わせよう。」の3つがあります。この「かけ合わせよう。」の一つがさきほどの「クロスキャンプ」です。社員とキャリア入社者、営業と技術など、いろいろなクロスを生み出して、データ活用文化を浸透させています。

オープンなカムバック採用と専門性重視の新人事制度

渡辺
デジタル人材のキャリア採用を増やしていく中で、採用面でご苦労されている点について教えていただけますでしょうか?

田中
データサイエンティストなどのデジタル人材は、市場価値が高い方々に来ていただきたいのですが、給与水準が非常に高い。その影響もあって、海外企業に決める方もいらっしゃるのが悩みです。

渡辺
スペシャリストの給与テーブルは無いのですか。

田中
今、そうした新しい制度を作っているところです。今後は、以前に比べて待遇の調整をしやすくなると思います。

古川
なお内製化のデメリットとしては、育った人材が巣立って行ってしまう、ということも実際にはあります。

田中
前向きに捉えるなら、卒業生が外に出ていって、「ドコモから来たデジタル人材は優秀だ」というアルムナイ(卒業生)ブランドができたら、それも企業価値の一つではないかと思います。カムバック採用も実施しているので、一度社外に出た方を採用することもあります。外の世界で得られた学び、経験、能力を持って帰ってきてくださいというオープンな仕組みです。

渡辺
弊社も戻ってくる人が多く、良いことだと思っています。外に出た経験を踏まえた上で、C&R社でできることがあると選択してもらえている。求職者の皆さんは、自分の専門性をより生かしていきたいと考えていますから。

田中
新年度(2023年4月)から始まる人事制度では、ジョブ型的な仕組みを取り入れてより実力主義にしていきます。実力を切り開くのは市場に通用する専門性で、それを高めていこうとしています。社員の皆さんが動きやすいように仕組みを整えて、イノベーションをどんどん起こしていこうというメッセージを発信しています。仕事のやり方と企業文化をセットで変革するので、やることがいっぱいです(笑)。

渡辺
人事制度まで変えているところがすごいですね。イノベーションを起こすために「いろんな講座をやります、自由に参加してください」という会社はよくありますが、参加したことで自分の評価はどうのなるのか、キャリアパスはどうなるのかというビジョンまで設計されているところが素晴らしいと思います。

田中
制度を変えると行動変容が起きるので、仕事への満足度を含め、自律的キャリアへの効果が出てくると考えています。壮大な実証実験のようで、今後どのような成果がでてくるか楽しみです。

おわりに

今回は、急速に人事変革を進めているNTTドコモで「データ活用人材5000人」達成に向けて活動している田中様、古川様に、人材育成、キャリア採用の両面で具体的にどのように進めているのかを語っていただきました。

多様な職種の人が集まってプロジェクトを行う研修「データクロスキャンプ」に加えて、データ活用文化の醸成やカムバック採用、さらには人事制度改革まで、多岐にわたる施策を有機的に結合させている点がデジタル人材の課題に取り組むみなさまのヒントになったのではないでしょうか。

この記事を書いた人

HIGH-FIVE編集部

取材・文、撮影、編集:HIGH-FIVE[HR]編集部