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公開日:2022/07/11

変更日:2023/08/31

新たなマーケット創出を担うクリエイティブ人材の採用・育成戦略 ~amadana流イノベーション創出をヒントに探る~

初めに

日本はメーカーを中心とする技術力や品質に対する評価・信頼性の高さから「モノづくり大国」「技術立国」と言われてきました。しかし、近年は市場環境が劇的に変化するなか、企業が持続的に成長するために欠かせない「イノベーション創出力」が低下していると言われています。

今回は、「クリエイティブ総合商社」を標榜し、クリエイティブを基盤とした数々のイノベーティブな試みを世に問い続けているamadana株式会社(以下amadana)の代表取締役社長/CEO熊本様と、クリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)で、デジタル人材の採用において多くの企業を支援してきた執行役員 渡辺の対談企画を実施。
イノベーションを起こせる企業の在り方、イノベーションを起こすためにどんな人材が必要か、またその育成はといった観点で語っていただきました。

【プロフィール】

熊本浩志氏
amadana株式会社 代表取締役社長/CEO
新卒入社の株式会社東芝を経て、2002年、『株式会社リアル・フリート』(現・『amadana株式会社』)設立。クリエイティブを武器に、さまざまなモノ・コトの潜在ニーズを掘り起こし、新たなマーケットを切り拓いている。とくに近年は東京ヴェルディのリブランディングや草野球チームの支援などスポーツエンターテイメント分野で数々のイノベーションを起こしている。

渡辺 和宏
株式会社クリーク・アンド・リバー社 執行役員
クリエイター・エージェンシー・グループ グループマネージャー
2002年株式会社クリーク・アンド・リバー社入社。映像分野で活躍する派遣就業クリエイターを担当、また制作受託の営業に従事。その後2005年から人材紹介事業を担当。

クリエイティブを武器に新たなマーケットを創出する「クリエイティブ総合商社」amadana

渡辺
まずは簡単に自己紹介からさせていただきます。
私は2002年の入社以来、クリエイティブ・プロフェッショナル人材のために、最も輝ける環境で仕事をしてもらうためのサポート、独立支援に携わってきました。C&R社は、当初はデザイナーなどのクリエイター専門の人材紹介エージェンシーでしたが、現在は医師や建築士、会計士といったプロフェッショナル人材についてもご支援しており、私自身はクリエイターと料理人の転職支援チームの責任者を担当しています。
熊本さんはどういった経緯でamadanaを設立されたのですか?

熊本
amadanaの設立は2002年ですから、渡辺さんのC&R社のキャリアスタートと一緒ですね。同期生だ。(笑)
それはさておき、それ以前は大手電機製品メーカーに勤めていました。大手企業にありがちな過去の成功体験や既得権にしがみついた、イノベーションが生まれにくい体質から抜け出すために自分で会社起こしたほうが早いとの想いでamadanaを設立しました。

amadana株式会社 代表取締役社長/CEO 熊本浩志氏

渡辺
「クリエイティブ総合商社」として、さまざまなビジネスを展開されていますが、具体的にはどんなことをされているのですか?

熊本
何をつくっているのかとかやっているのかと問われると答えに困るんですよ(笑)。漠然としていますが、モノもつくるし、コンセプトもサービスも、形のあるものないものすべて同じテーブルの上で創りあげていくという仕事ですね。実現したかったのは、世の中に転がっているモノゴトに製造技術だとかテクノロジーを活用して、そこに新たな発想やデザインを掛け合わせて新しいマーケットをつくり、潜在的ニーズを掘り起こすことです。

我々の強みはクリエイティブなので、それを武器にどんどん、いろいろな垣根を越えて新たなマーケットを創出する。だからクリエイティブ総合商社と言っています。

「愛」と「情熱」がない限り、イノベーションとなるようなビジネスは起きない

渡辺
最近はコーヒーショップやスポーツ関連のイノベーティブなビジネスを次々打ち出されていますが、イノベーションを起こす方程式というか秘訣みたいなものはあるのですか?

熊本
精神論になってしまいますが、新しいマーケットを創出したい、これを改革したいという気持ちと絶対できるという気合だけは忘れてはならないと思っています。やってみたら結果的にイノベーションになっていたということですね。
ただ、自分のなかでポリシーというか肝に銘じていることはひとつあります。

渡辺
それはどんなことでしょうか?

熊本
何をするにしても、対象となるモノ、コトに「愛」「情熱」がないと成就しないということです。ひとつの分野に対して突き詰めるとか、仕事と遊びの垣根がないくらいそこに情熱を燃やせないとイノベーションとなるようなビジネスは起きません。

例えば、当社で『Beasty Coffee by amadana』というコーヒーブランドを展開していますが、社員の一人が大のコーヒー好きで、「豆に対してもカフェの運営に対しても、一杯のコーヒーを飲むお客さまに感動体験を与えられるコーヒービジネスを一気通貫でやりたい」という発案からなんですね。そこに本気の情熱とコーヒーに対する愛を感じたので、やってみろと。

渡辺
でも、情熱だけではビジネスは成り立たないのでは?

株式会社クリーク・アンド・リバー社 執行役員クリエイター・エージェンシー・グループ グループマネージャー 渡辺 和宏

熊本
おっしゃる通り。プロジェクトにゴーサインを出すためには、例えば必要なバリューチェーンのピース、いわゆる人・モノ・金・情報が10個あるとして、本人や近いところに3つ4つ確保できればとりあえずスタートさせます。あとの6個は状況に応じて外からアサインしてくればよいわけです。よくしたもので、本気の愛情と情熱があれば必要なピースが何かもわかるので、ちゃんと集められるし必然的に集まってくるんですね。

『Beasty Coffee by amadana』はスタート時に、敢えてカフェ激戦区の奥渋エリアに最初の店舗『奥渋カフェ』をオープンさせたんです。何かを始めるなら一番厳しい環境でやろうと。普通のマーケティング理論だったら避けるところですよ。でも激戦区だからこそコーヒーに愛がある、熱狂する人がいます。そこで認められればブランドになるし、新たな文化、イノベーションになると思うんです。世の中に広めて文化をつくっていくのに、コアになる人を巻き込んで大きなうねりをつくるという発想を持っていないと、単なる新規事業でイノベーションではない。イノベーションの定義って多分そこにあると思うんです。

渡辺
その発想は当社にも通じるものがありますね。当社の代表の考え方も、とりあえずという言い方は適切でないかもしれませんが、新規事業を起こすにあたって、手を挙げた者に責任を持たせ、スタートさせる。そして、本人が続けるって言っている限りは存続させている。客観的に、それこそ愛のない人間から見ると「やめたほうがいいんじゃないの」となっていても、本人がやると言っていれば続けています。

熊本
大企業にありがちな、最初からピースを10個揃えなくてはスタートしないなんて、機会を逃すし、もし失敗した場合のダメージも大きいですよね。さらに言えば、経営者もプロジェクト担当者も、その失敗を恐れたり、許容したりできないから前に進まない、イノベーションのジレンマに陥るわけです。

もうひとつ加えると、よくクライアントに「それは前例がないので、どうも・・・」と言われるんですね、前例がないからイノベーションなわけで、前例のないことやりましょうよって。失敗したら責任は全部私が負いますからって。

渡辺
トライ&エラーはつきものなのに、それが我慢できないんですね。
いただく求人の人材要件に「イノベーションを起こせる人」と書いてあるとして、会社全体にコンセンサスが取れていればいいのですが、残念ながら本質的に大きな変革を恐れていたり、許容できない組織が多いですね。それではイノベーションは生まれない。

熊本
私の場合、小さな失敗、エラーを早い時期にたくさん繰り返すことが大切だと思っています。リカバリーの幅も深さも時間も小さくて済むし、その学習から本質的なバリューチェーンのピースをリソースしていけばいいんです。ですから最初のうちは組織という箱は持ちません。ビジネスとして成り立ちそうだという時期を見定めて組織化するやりかたです。

渡辺
なるほど。バリューをつなげていく、積み上げていくのだから確実だし強いですね。まず、「イノベーション開発本部」みたいな箱をつくって寄せ集めるより、よほど理に適っていると感じます。

必要なのは得意技+もうひとつのスキル、そして「面白がれる」という視点

渡辺
amadanaは採用するにあたって、どういう目で人材を見て、どういう基準で採用されているのか、とても興味があります。先ほどのコーヒービジネスにしても、コーヒーが好きだから採用したわけではなく、採用した人材がたまたまコーヒー好きで結果ビジネスになったんですよね。

熊本
基本的に当社の社員のバックグラウンドはデザイナーです。グラフィック、プロダクト、Webなどひとつのプロフェッショナルスキルを持っていて、その上でカメラができるとかデジタル系にも強いとか戦略立案も得意といったマルチスキルを持っている人材が多い。ひとつの得意技を持っていることは大事だけれど、それ以外にこれできますというのが必要だし、求めますね。求めますといっても採用時にマルチに持っていることがマストではなく、周辺領域でもまったく別なことでも頭突っ込んで吸収する行動するというスタンスがあるかどうかを見ています。

そういうスタンスがないと、得意分野の深掘りと垂直統合しかできない。そういう仕事もあるけれど、イノベーションを起こせるビジネスは水平分業が不可欠な時代になっていて、どうしても他分野のピースを集めなくては成り立たないんです。他を知ることでそこにリスペクトが生じて、価値観の共有からコミュニケーションも良くなる。だから「私はこれしか知らない、ここまでしかできない」という人材はamadanaには不向きということになる。

渡辺
周辺領域に、自ら進んで越境できるような人材でないと活躍できないと。

熊本
つけ加えれば、いろいろなことを面白がれるかどうかをすごく大事にしています。誰も面白くないと思っていることを、「これ、めちゃくちゃ面白いですよ!」って言える人にすごく興味がありますね。そこを面白がれるということは、人と違う視点を持っているわけで、私からするとその視点がとても大切なんです。

目の付けどころについて話をすると、私は、売れてないモノとか昔売れていたけれどいまは忘れられているモノ、皆がいまは価値がないと思っているモノが大好きなんです。それを編集して、磨き直して世に出してあげる。

渡辺
埋もれてしまったモノにスポットライトを当てればいいと。

熊本
いま現在盛り上がっているモノって競争が生まれるわけで、必ずシェア争いが始まります。長期的にみればコストをかけなくてはいけない。
野球に関するビジネスが良い例です。皆言いますよ「なんで野球なの?人気も競技人口も下降線でしょ」と。自分が野球をやっていて、野球に対する愛情があったということと、やはり野球が好きなメンバーがそろったという要因もありますが、東京ヴェルディの野球チーム『バンバータ』や他の野球に関するビジネスも軌道に乗り始めていますからね。

amadana株式会社 代表取締役社長/CEO 熊本浩志氏 ちょっと脱線しましたが、とにかく一人でイノベーション起こせる人はそれほどいないわけで、結局は何かの目的のためにピースを埋めていくという作業が圧倒的に多い。そこで必要なのが得意技プラスもうひとつのスキル、そして視野の広さなんだと思っています。

期待値を超える「101点のデザイン」を出しなさい

渡辺
クリエイティブ人材の転職支援をしている立場から言うと、一般的にデザイナーはマルチにさまざまなスキルを高めていくというよりは、デザイナーとしてのスキルを追求したい方が多いと感じます。

デザインスキル以外に、例えば自分の趣味や過去のバックグラウンドで“武器になりうるもの、愛情や情熱を傾けているものがあったとしても、キャリア相談の場では中々そこまで踏み込んでお話することが少ないのが実情です。今後は趣味やプライベートの深い部分まで掘り下げ、デザイナーとしての得意技の他に、ある種の個性ともいえるもうひとつのスキルを持つ方とお会いした際には、amadanaにぜひご紹介したいですね。

熊本
ぜひお願いしたいですね。今年の中途入社社員で大学でデザインを専攻したグラフィックデザイナーがいるんですが、彼は現役のVリーグ(バレーボール)選手でもあったんです。amadanaには基本的に体育会系と美術系という相容れない関係の人間が共存しています。それが我々のダイバーシティなんですね。

渡辺
熊本さんは社員の能力・パフォーマンスを引き出すために、何か工夫されていることはありますか。

株式会社クリーク・アンド・リバー社 執行役員クリエイター・エージェンシー・グループ グループマネージャー 渡辺 和宏

熊本
デザイナーに対してなら「101点のデザインを出せ」ですかね。オーダー通りに出して100点ならその期待値をひとつ越えるものを出さないとクリエイターじゃないと。オーダーの本質は何なのか、課題の本質は、クライアントが求めているのは何か、そこを読み切って出せるのが100点、その上で相手の心理まで深読みして101点を出せるんです。

クリエイティブ人材は、余計なお世話をしろと。ただ、あまりオーバーしてしまうと、今度は受け入れるキャパを超えてしまうので気を付けなくてはいけませんけれど。

渡辺
表現の仕方は異なりますが、デザイナーの求人案件でよくありますね。言われたことだけをやってきた人はいらないと。
例えば女性向けだったらこのパターンの表現、男性向けだったらこうしておけばOKと、注文通りのことしかできない人は必要ないと。

熊本
体育会系の人材にはとにかく自分の頭で考えて行動する、自分の考えを言うことを身につけさせます。競技スポーツ界では、とくに野球は監督のサインは絶対で、送りバントのサインを無視してホームランを打っても褒められないんです。それではいけないと。「自分はこう思うからこうしたい」と普通にしっかり言えるようなカルチャーを当社には根付かせています。このことは『東京ヴェルディ・バンバータ』のジュニアチームから土壌づくりをしています。

渡辺
そういったこともスポーツ界では大きなイノベーションですよね。

熊本
それから自分で考えることのバリエーションですが、週休3日制をもう5年も前から取り入れています。私の考えでは、3日のうちどこかは「休む」のではなく「インプット」する時間を持たせたかったんです。仕事はアウトプットですよね。そしてアウトプットは時代や旬で常に変わるから、クリエイターは常にインプットとアウトプットのバランスを取らなくてはならないんです。何をやっていても構わないんですが、一応その使い方は聞きます。過ごし方で新たな側面が見えたりするんで。

渡辺
週休3日制を採用する企業もちらほら出てきましたが、聞くところによると捉え方によっては結構きつい制度だと。5日間で行ったことを4日でやらなくてはならないとか、実働日数が減ったため給与が下がったとか。
amadanaの場合は、休みではなく、自分を養う日ととらえるわけですね。
いろいろなお考えをお聞きして、イノベーションを巻き起こすamadanaの顔を見ることができました。

本日はありがとうございました。

終わりに

当対談では、イノベーションを起こせる企業の在り方、イノベーションを起こすためにどんな人材が必要か、またその育成はといった観点で語っていただきました。

amadana熊本様の手法、考え方であるイノベーションを起こせるクリエイティブ人材の在り方、マルチスキルと面白いと思えるメンタリティ、360度の視野などは、企業の人事・採用担当者にとっても通じるものがあったのではないでしょうか。

この対談を参考に多くのイノベーションを創出していただければ幸いです。

この記事を書いた人

HIGH-FIVE編集部

取材・文、撮影、編集:HIGH-FIVE[HR]編集部